2009年01月23日

偽官軍と処断された赤報隊 相楽総三

相楽総三は天保十年、下総相馬郡出身で高利貸しなどで資産を蓄えて江戸で広大な土地を所有した裕福な郷士・小島兵馬の四男・小島四郎として江戸赤坂に生まれる。四郎は幼い頃から国学や兵学に秀で二十歳の時には門弟を二百人も抱えるほどの私塾を開いた。四郎の傾倒した国学(平田学)は平田篤胤の創始した尊王運動のバイブルのようなもので四郎に多大な影響を与えたという。四郎は安政の大獄や桜田門外の変で衝撃を受け父・兵馬から五千両の金子を引き出して尊王運動の同志集めの為、奥羽方面へ旅に出る。四郎は平田篤胤の故郷久保田(秋田県)に向かい途中、信州の国学者で尊王攘夷派の飯田武郷と親交を深めた。元治元年、二十五歳の時に水戸藩攘夷派天狗党の筑波山挙兵に加わったが思想に相容れぬものがあったため山を降りたと言う。慶応元年、江戸へ戻った四郎を留め置きたい父・兵馬は雲州松江藩の松平家に仕える渡辺某の娘・照という美しい嫁を迎え腰を落ち着かせようとした。しかし、子供(河次郎)が出来た慶応二年に尊王の志を捨てきれず京都へ上り勤皇派の長州藩士と親しくなり薩長同盟の締結で薩摩藩とも親しく付き合うようになり西郷隆盛と親交を持つ。慶応三年、幕府の大政奉還で倒幕の口実が無くなることを恐れた西郷は江戸で騒ぎを起こして幕府を挑発しようと画策し四郎に同志を集めさせて江戸市内を撹乱させるように頼む。四郎は奥州同志集めの旅で出会った落合源一郎や権田直助ら総勢五百名も集まったと言う。四郎はこの頃から一貫して相楽総三と名乗った。この隊は薩摩藩邸浪士隊となり相楽は首領となって江戸市中で放火や強奪を繰り返し追っ手が迫ると薩摩藩邸に逃げ込んだ。江戸の警備を担っていた庄内藩ら四藩が業を煮やして薩摩藩邸に攻撃を仕掛け相楽ら浪士隊は多くの犠牲者を出しながら江戸を逃げ出した。このことを発端に京都で鳥羽・伏見の戦いが始まり西郷ら薩長軍は堂々と倒幕の旗を揚げ幕府を朝敵に仕立て上げた。相楽はこうした汚い仕事を国の未来の為に進んで引き受け、西郷は涙を流して相楽に感謝したという。慶応四年、相楽は西郷と岩倉具視の支援を得て近江国松尾山の金剛輪寺において倒幕の先駆けとなる部隊を結成し盟主に公家から綾小路俊実、滋野井公寿を擁立して相楽は隊長となった。名前は「赤心を持って国恩に報いる」から赤報隊と名づけた。相楽は新政府から「年貢半減」の許可を得て世直しを宣伝しながら信州へと進み旧幕府に苦しめられていた多くの農民の支持を得た。しかし岩倉具視ら新政府側は倒幕軍の軍資金不足を補う為に鴻池や三井組などの豪商から莫大な金を出してもらう代わりに年貢米取り扱いの特権を与えたので「年貢半減」の実施をする気が無く文書などの証拠類は一切残さず新政府による東征軍の準備が整うと魁の役目を終えた赤報隊や高松隊に「偽官軍」の烙印を押し、「年貢半減」は相楽らが勝手に言い回っていることで新政府は知らないと討伐軍を出した。相楽は下諏訪に陣取って旧幕府領へ出立の準備をしていたが親友の落合源一郎や権田直助が江戸探索へ向かう途中、官軍の不穏な動きに心配して下諏訪の相楽に警告しようと訪ねた。しかし、相楽が留守だったので江戸へ向いこれを知った相楽は大垣の東山道軍総督府へ弁明に赴いた。この件は薩摩藩の委任となって下諏訪に戻った相楽は東山道軍先鋒総督が下諏訪に入ると陣屋を引き渡す為に樋橋村に退いた。翌日、続々と下諏訪宿陣屋に東山道軍の部隊が到着し本体が到着したので軍議を開くので出頭するように相楽に命令が届く。部下たちは引き止めたが相楽は大木四郎を伴って出頭、すぐさま捕縛されてしまう。樋橋に残った部下たちも一網打尽に捕縛されて諏訪大社の並木に縄でつながれた。東山道軍が出立した後、薩摩藩兵の命令によって大木四郎、小松三郎、渋谷総司ら幹部たちが宿場外れの田んぼで斬首され、最後に相楽総三が首を落とされた。享年三十歳・・相楽総三が下諏訪で処刑の一報を受けた妻・照は子供(河次郎)を総三の姉に託して後追い自殺したと言う。相楽の首は親友・飯田武郷が夜陰に紛れて盗み出し密かに埋葬された。昭和三年、総三の孫・木村亀太郎の努力により名誉が回復され正三位を贈られて靖国神社に合祀された。
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